太田述正コラム#0445(2004.8.18)
<変化の端緒が見られる韓国(その5)>
(本日は票が伸び悩み、ついに14位に転落してしまいました。
20日は目前です。気をとりなおして、
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/mag2books/vote.cgi?id=0000101909
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しかし、表見的なことに惑わされてはなりません。
まず、押さえるべきことは、韓国から見て、日本ほどあらゆる近代社会制度が似通っている国はほかにはないということです。
韓国の近代が日本の植民地化によって始まった以上、それは当然のことです。
例えば、韓国の法体系は日本の法体系の一バリエーションだと考えてよろしい(コラム#262)。
新聞だってそうです。
先だっても、韓国でプレスクラブ制度が廃止されたとニューヨークタイムスが報じました(http://www.nytimes.com/2004/06/13/international/asia/13kore.html。6月13日アクセス)。
プレスクラブ制度というのは、先の大戦に至る過程で総動員体制の一環として日本で確立した制度であり、内閣や各官庁において、プレスクラブ会員となる新聞社等を官庁等の側が選定し、選定された会員に対して(官庁等の大部屋の中に机や電話を与え、事務員も配置する等の)便宜を供与し、会員だけに優先的に情報を与え、その代わり、会員各社が書く記事の発表タイミングや記事内容等にしばりをかける、という制度です。
要するに、プレスクラブ制度とは、官庁情報の開示にかかる談合構造なのです。
戦前に植民地下の朝鮮半島にも持ち込まれていたのでしょう。爾来、韓国はこのプレスクラブ制度まで、後生大事に守ってきたというわけです。
さすがに日本では、クラブの会員にしてもらえなかった外国プレスからの長年にわたる批判もあり、このところようやくプレスクラブ制度は崩れてきていたのですが、この動きがタイムラグを伴って韓国にも波及した、ということなのでしょう。
もう一つ忘れてはならないことは、韓国経済と日本経済が切っても切り離せぬ関係にあることです。
韓国経済が「離陸」したのは、1965年12月の日韓国交正常化以降です。
日本からの経済援助と日本との貿易の活発化により、韓国は高度成長を始め、1975年頃に初めて韓国の一人あたり所得は北朝鮮を抜き(典拠失念)、その後も成長を続け、漢江の奇跡を達成したのです。
韓国の中国との貿易総額が米国との貿易総額を抜いて第一位となり、日本との貿易総額は第三位に過ぎないとは言っても、現在でも韓国の経済活動は、(北朝鮮を除けば)最も近い隣国であり旧宗主国でもある日本からの部品、工業素材、工作機械等の輸入があって初めて成り立っています。
それが証拠に、韓国は日本に対して最も大きな貿易赤字を(IMF危機の頃を除いて)毎年計上し続けてきており(http://www.nihonkaigaku.org/ham/eacoex/100econ/120doms/121prod/1212trad/tradekr/tradekr.html。8月17日アクセス)、今年の上半期には、史上最大の対日赤字を記録しています(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200407/200407060045.html。7月7日アクセス)。
このように韓国が近代社会制度も経済も日本に負っていることは、韓国人の全般的学歴が向上すればするほど、韓国人の自覚するところとなるはずです。
中国ブームだとは言っても、現在、韓国で日本語の授業を選択できる高校は1715校もあって、全高校の55.2%に達しているのに、中国語の授業を選択できる高校はまだ531校しかありません。(ちなみに、ドイツ語がそれに次いでおり、381校ある。)(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200406/200406300035.html。7月1日アクセス)
実は世界的に日本語学習熱はどんどん高まってきているのですが、海外の日本語学習者数に関する昨年7月から今年3月までの調査によれば、ダントツに多いのは韓国で約89万4000人にのぼり、以下中国約38万8000人、豪州約38万2000人と続きます(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20040705it15.htm7月5日アクセス)。
朝日が報じた「親」日本ムード(コラム#439)が、韓国の人々の本格的な親日化の端緒であってくれればいいな、と私は期待を募らせつつ見守っています。
(続く)