太田述正コラム#0447(2004.8.20)
<変化の端緒が見られる韓国(その6)>
(現在、12位を完全に射程内にとらえています。まだ後二日以上あります。10位以内は決して夢ではありません。とにかく、
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/mag2books/vote.cgi?id=0000101909
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<中間的補足>
A 敵を呪わば穴二つ(コラム#443の補足)
本日の朝鮮日報(電子版)は概略次のような大ニュースについて、記事を三本も掲載しています(注9)。
(注9)このニュースを18日の朝日・産経・東京・日経・読売・毎日の電子版の国際欄は完全無視を決め込んでいる。一部TVでは報道したようだが、この六大中央紙は一体どこの国の新聞なのだろうか。
与党ウリ党党首(chairman)の辛基南(シンギナム。Shin Ki-nam)の父親のShin Sang-mook (1916??1984年)は旧日本軍の憲兵であったことが判明し、辛党首もこれを認めた。
辛党首の父親は師範学校卒業後1938年に小学校の教諭になったが、1940年に志願して日本の陸軍に入り、憲兵になった。しかも、彼が小学校のかつての教え子達に対し、「生徒は無条件に教師を尊敬し、教師に従わなければならない。・・一人の教師として、自分自身がまず日本軍に志願しなければならないと考えた」と志願の動機を語ったという、朝鮮総督府の御用新聞に掲載された記事が発見された。
これまでウリ党が先頭に立って日本への協力者を暴き出す運動を展開してきたが、その党首の父が積極的な日本協力者であったとは目も当てられない。
看過できないのは、辛党首がこの事実を知っていて、動かぬ証拠をつきつけられるまでウソをつき通してきたことだ。辛議員の党首辞任は避けられないだろう。
(以上、http://english.chosun.com/w21data/html/news/200408/200408170007.html。http://english.chosun.com/w21data/html/news/200408/200408170059.html、http://english.chosun.com/w21data/html/news/200408/200408170039.html(いずれも8月18日アクセス)による。)
戦前、朝鮮半島は日本の植民地、というより日本そのものだったのですから、戦前の朝鮮半島の住人の大部分は・・すなわち現在の働き盛りの韓国人の親の世代の大部分は、日本国民として「日本協力者」であったはずであり、ウリ党やウリ党支持者達は、何と愚かな運動を展開してきたことか、と今頃臍をかんでいるに違いありません。
B 韓中歴史論争四方山話(コラム#439の補足)
朝鮮日報の「<中国は>古朝鮮(Gojoseon)・・の歴史も中国史の中に取り込もうとしている・・<そんなことに>なれば、朝鮮民族の歴史は2000年間に縮められ・・てしまうことになる」という論説を前にご紹介しました(コラム#439)。
高句麗史の問題だけ取り出して見れば、中国側より韓国側の主張の方にやや分があると思いますが、総体的に見れば、現在の韓国人の歴史観は、途方もなく不合理(「不条理」と言ってもいいでしょう)なものであると言っていいでしょう。
そのあらわれが、韓国における古朝鮮観です。
韓国では古朝鮮については、国定歴史教科書におおむね次のように記述されています。
紀元前2333年に朝鮮という、平壌城を首都とする朝鮮民族の国ができる。この国を後世の李氏朝鮮等と区別するために古朝鮮(コチョソン)と呼ぶ。古朝鮮は、檀君(タングン。Dangun)が支配する檀君朝鮮が約1500年続いた後、紀元前300年前後に箕子(キジャ。Gija。殷(商)最後の紂王の伯父。周の武王によって幽閉から解放される)が檀君から禅譲を受け、箕子朝鮮となり、その箕子朝鮮が紀元前195年(194年?)に燕人(漢人)の衛満(ウィマン。Wiman)によって簒奪され、衛氏(ウィシ(ウィジャ?))朝鮮となる。衛氏朝鮮、すなわち古朝鮮は紀元前108年に漢の武帝によって滅ぼされ、後に高句麗が勃興するまで、朝鮮民族は国を失う。
このような国定教科書によって育てられてきたため、戦後育ちの韓国(と北朝鮮)の市民の大部分は、以上のすべてが基本的に史実だと思いこんでいます(注10)。
(注10)韓国でも昨年ようやく、檀君朝鮮は神話的存在だ、と実証的に指摘する勇気ある歴史学者が現れた。しかし、彼は市民からの「植民史学者」、「歴史の歪曲」という激しい批判に晒されている(http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/02/14/20030214000037.html。8月18日)
ところが、箕子朝鮮と衛氏朝鮮こそ、中国の信頼性の高い「史記」と「漢書」に登場しますが、檀君朝鮮は、高麗時代になって一然(イルヨン。1206??89)という僧侶が書いた「三国遺事(サムクッユサ)」(この本を解説した本?)の中に出てくるだけであり、韓国(と北朝鮮)を除くあらゆる国の歴史学者は、檀君朝鮮は神話上の存在だとみなしています。そして朝鮮民族の「国」の成立は紀元前4世紀までしかさかのぼれないとしています。しかも、箕子朝鮮も神話上の存在だとする説も有力であり、そうなると朝鮮民族の「国」の成立は紀元前2世紀までしかさかのぼれない、ということになります。
(以上、朝鮮日報(日本語版)上掲、及びhttp://www.blu.m-net.ne.jp/~tashima/b19.html、http://haniwa82.hp.infoseek.co.jp/k-textbook/dankun.html、http://encyclopedia.thefreedictionary.com/Gojoseon(いずれも8月18日アクセス)による。)
神話を史実とみなして上で、単一の国定教科書で初等中等教育をしばる、というやり方も、戦前の日本がやっていたことの忠実な踏襲です。
たとえが適切ではないかもしれませんが、これは、日本の「辺境」である沖縄に古い日本語が残ったのと同じような話にほかなりません。韓国が、時代の進展に応じて、(プレスクラブ制度の廃止だけではなく、)あらゆる面で戦前の日本の負の呪縛から自らを解放していくことを願ってやみません。
(続く)