太田述正コラム#8889(2017.2.1)
<米帝国主義の生誕(その8)/米帝国主義の生誕(続)(その1)>(2017.5.18公開)
「・・・米国の海外帝国は、国内の国民国家を、何らかの内なる圧力で全球的形態へと膨張させられたものへと広げるのではなく、補完し安全にすることを意図したものだった。・・・
⇒安全保障目的で海外を植民地化したところの、日本のことと間違えているんじゃないか、と抗議したいところです。
ハワイ領有についてもそうですが、とりわけ、米国のフィリピン領有の経緯は、「力によって睥睨することが自己目的化した」(コラム#8867)、としか形容のしようがないからです。(太田)
<この当時に見られた、>内側のもろもろと外側のもろもろ、諸包摂と諸除外、市民達と臣民達、の間の諸緊張の一連のもの、は、著者は、全球的資本主義の中心的な政治的諸矛盾であることを我々に気付かせてくれる。
「ナショナリズム、反植民地主義、そして、社会民主主義、の諸理想が最も爆発的な形で混ぜ合わされた」、と彼は結論付ける。
著者は、当然ながら、米国の19世紀について書いているわけだが、かなりのところ、同じことが、過去の10年にわたって世界の多くの部分を襲った政治的危機にもあてはまりそうだ。
<米>国民国家の興隆に伴って生じた諸緊張と同じものが、その衰亡と共に再出現している。・・・」(F)
⇒この書評子は、国民国家興隆期以前は諸所の地域がバラバラであった米国が、今や、白人が少数派になろうとしていることに伴う白人対非白人の対立軸、それに、貧富の格差の増大、が絡み合ったバラバラ状態に直面しつつあることを指して国民国家の衰亡と言っているのでしょうね。
しかし、私としては、著者にしても書評子達にしても、米国民国家ならぬ、米帝国主義の興隆と衰亡の描写、解明により力を入れて欲しかったと思います。(太田)
(完)
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–米帝国主義の生誕(続)(その1)–
1 始めに
引き続き、今度は、ステファン・キンザー(Stephen Kinzer)の『本当の旗–セオドア・ローズベルト、マーク・トウェイン、及び、米帝国の生誕(The True Flag Theodore Roosevelt, Mark Twain, and the Birth of American Empire)』のさわりを書評群をもとにご紹介し、私のコメントを付します。
A:https://www.washingtonpost.com/opinions/tough-questions-the-nation-faced-after-the-spanish-american-war/2017/01/27/0b630ac4-b66a-11e6-a677-b608fbb3aaf6_story.html?utm_term=.22a34fb70319
(1月28日アクセス)
B:https://www.nytimes.com/2017/01/27/books/review/true-flag-stephen-kinzer.html?_r=0
(1月30日アクセス(以下同じ))
C:http://www.globalresearch.ca/the-true-flag-theodore-roosevelt-mark-twain-and-the-birth-of-the-american-empire/5553284
D:https://www.bostonglobe.com/arts/books/2017/01/19/debating-very-nature-freedom/kVpm9wOyX6CkjuhGIUi3FM/story.html
E:http://washingtonmonthly.com/magazine/januaryfebruary-2017/the-birth-of-the-imperial-presidency/
F:http://www.pressreader.com/ (参考)
なお、キンザー(1951年~)は、米国の著述家、ジャーナリスト、学者であり、NYタイムスの記者としてキャリアをスタートさせ、記者時代にノースウエスタン大でも教鞭を執り、現在、ボストン大で米外交政策について教鞭を執っている、という人物です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Stephen_Kinzer
(続く)
米帝国主義の生誕(その8)/米帝国主義の生誕(続)(その1)
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