太田述正コラム#9167(2017.6.20)
<改めて米独立革命について(第II部)(その1)>(2017.10.4公開)
1 始めに
それでは、引き続き、アラン・テイラー(Alan Taylor)<(コラム#6006)>の『アメリカ諸革命–ある大陸の歴史1750~1804)(American Revolutions: A Continental History, 1750~1804)』を取り上げる、第II部です。
A:https://www.theatlantic.com/magazine/archive/2016/12/the-accidental-patriots/505835/
(6月5日アクセス)
a:https://www.nytimes.com/2016/09/11/books/review/alan-taylor-american-revolutions.html
b:https://www.lrb.co.uk/v38/n19/eric-foner/enter-hamilton (冒頭の無料部分)
c:https://regarp.com/2016/10/30/review-of-american-revolutions-a-continental-history-1750-1804-by-alan-taylor/
d:http://www.slate.com/articles/arts/books/2016/09/alan_taylor_s_american_revolutions_reviewed.html
e:https://www.washingtonpost.com/opinions/the-still-unresolved-struggles-that-gave-birth-to-america/2016/10/05/b21ea3f2-80fd-11e6-a52d-9a865a0ed0d4_story.html?utm_term=.6be18e58a50b
f:https://www.bostonglobe.com/arts/books/2016/09/08/were-colonists-united-during-revolution-nope-says-new-history/5s4ZUxjLO3aoEvroCeic2L/story.html
なお、テイラー(1955年~)は、米メイン州のコルビー(Colby)単科大学卒、ブランダイス(Brandeis)大学博士で、カリフォルニア大ディヴィス校、ボストン大を経て、現在、ヴァージニア大教授、という人物です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Alan_Taylor_(historian)
2 米独立革命の全体像
(1)序
「著者は、それは、分断だらけの、暴力的で破壊的な、我々の最初の内戦だった、と記す。
⇒米独立革命は、イギリス内戦としては二回目だったわけですが、英領北米植民地だけを見れば、一回目の内戦だった、ということになります。(太田)
この紛争は、ぐじゃぐじゃで、始まったばかりで混乱していて、しばしば、国民的アイデンティティの強い感覚を持たない、気乗りしない行動者達、によって戦われた。
これは、政治的諸制度、ないしイデオロギー、もしくは、就中、米国建国についての浪漫的神話、のなりゆき(evolution)についての本ではない。
それは、それぞれの諸利害に沿って行動する人々の複数の諸集団、及び、これらの諸利害が、時に、激しく、重なり合い、乖離し、そして衝突すると共に生起した諸闘争、についての本なのだ。
これは、そのタイトルが語っているように、一つの革命についてではなく、様々な諸革命・・その全てが、必ずしも完結に至っていない・・についての記述なのだ。
<この、本、>『アメリカ諸革命(American Revolutions)』は、同じ著者の『アメリカ諸植民地(American Colonies)』の続編であり、この二つの諸時代を非連続のもの(disjoited)として扱う諸歴史書に反対する立場で書かれている。・・・
著者は、この諸紛争の全球的動態を探索する最近の諸学術的成果、と共に、パンフレット群を書き、火縄銃群を手に取ったところの、白人達についての、より伝統的な物語と並行して、女性達、アメリカ原住民達、そしてとりわけ奴隷達、の社会史をしっかりと<しかるべきところに>位置づける学術的成果、とを、総合し解釈する、という瞠目すべき仕事を成し遂げた。
(これより前の最善の仕事のいくつかは、この著者自身によって成し遂げられている。
すなわち、彼は、『内なる敵–奴隷制とヴァージニアにおける戦争:1772~1832(The Internal Enemy: Slavery and War in Virginia, 1772-1832)』と『ウィリアム・クーパーの町–共和国初期の辺境における権力と説得(William Cooper’s Town: Power and Persuasion on the Frontier of the Early Republic)』で、それぞれ、ピューリッツァー賞を受賞している。)
米独立革命を、東部沿岸に沿ったいくつかの戦場において、或いは、ボストンでのボイコットとフィラデルフィアでの諸議論という形で、最後までやり遂げられた出来事として扱うのではなく、著者は、それが、英国人達と植民地人達、ないし、(そのどちらもが、彼がアメリカ人達であると主張するところの、)親英派と愛郷者達、の間でだけ戦われたわけではなく、北米大陸に諸足掛かりを持っていた諸帝国の間でも戦われたところの、スペイン、フランス、そしてアメリカ原住民達が関わり、カナダからカリブ海地域にまたがり、アパラチャ山脈のかなたにまで及んだ、大陸<規模>の紛争として、まとめているのだ(frames)。
実際、西部が、13植民地群よりも大きいとまでは言えなくても、それらと同等の大きな役割を果たしたのだ。
(続く)
改めて米独立革命について(第II部)(その1)
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