太田述正コラム#9405(2017.10.17)
<定住・農業・国家(その1)>(2018.1.30公開)
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E:WSJ掲載書評のPDF
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1 始めに
ジェームズ・C・スコット(James C. Scott)の『穀物に抗して–草創期の国家群の掘り下げた歴史(Against the Grain: A Deep History of the Earliest States)』のさわりを書評群をもとにご紹介し、私のコメントを付します。
A:https://www.ft.com/content/aa39bc10-a836-11e7-ab66-21cc87a2edde
(10月6日アクセス)
B:https://www.newyorker.com/magazine/2017/09/18/the-case-against-civilization
(10月7日アクセス)
C:https://medium.com/@MarkKoyama/some-thoughts-on-seeing-like-a-state-6b151be25479
D:http://blogs.sciencemag.org/books/2017/08/01/hunters-and-foragers-thrived-while-early-agrarian-societies-struggled-argues-an-anthropologist/
なお、スコット(1936年~)は、「<米>国の政治学者、人類学者。農耕社会と国家を形成しない社会の研究、サバルタン政治学<(注1)>、無政府主義研究で知られる。専門は、政治経済学、政治社会学、とくに東南アジアの農村社会における叛乱・抵抗についての研究。・・・ウィリアムズ大学卒業後、1967年に<エ>ール大学で修士号および博士号取得。ウィスコンシン大学マディソン校で教鞭をとり、1976年に<エ>ール大学政治学部に移った。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BBC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%88
(注1)subaltern。「ヘゲモニーを握る権力構造から社会的、政治的、地理的に疎外された人々をさす術語。日本語では「従属的社会集団」などと訳されることがある。・・・この術語は、イタリアのマルクス主義思想家であったアントニオ・グラムシの業績に由来し、南アジア史における非エリート階層の役割に注目した南アジア史研究者たちのグループ、サバルタン・スタディーズ・グループ(Subaltern Studies Group)の業績を通してポストコロニアル理論に導入されたものである。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%B3
2 定住・農業・国家
(1)序
「解剖学的には、現代人類は、約20万年にわたって存在している。
その大部分の間、我々は狩猟採集者達として生きた。
次いで、約1万2000年前、我々を地球の支配者的地位に昇らせることになる、前後を画するものとして一般に合意されているところの、瞬間がやってきた。
新石器革命(Neolithic Revolution)<(注2)>だ。
(注2)狩猟採集か農業と定住への移行。この移行の結果、諸植物についての観察と実験が可能となり、その栽培化(domestication)をもたらした。
https://en.wikipedia.org/wiki/Neolithic_Revolution
⇒英語ウィキペディアの「注2」で紹介したところの、含蓄に富んだ書きぶりを念頭にとどめておいてください。(太田)
著者の言葉を用いれば、これは、農業、諸技術革新、とりわけ、牛や豚といった諸動物の家畜化(domestication)、そして、狩猟採集から諸穀物の植栽と育成への移行の「パッケージ」の我々による採用だった。
これらの諸穀物の中で最も重要だったのは、禾穀類(cereals)たる、小麦、大麦、稲、そしてトウモロコシだったが、これらは、人類の食事における基本食料品(staple)であり続けている。
<そして、>諸禾穀類は、人口増と諸都市の生誕、そして、しかるがゆえの、国家群の発展と複雑な諸社会の興隆、を可能にしたのだ。
<但し、>この本の中で語られた物語は、この広範に抱かれている説明ぶりを大いに修正している。」(B)
(続く)
定住・農業・国家(その1)
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