タイトル | : コラム#1690(未公開)のポイント |
記事No | : 157 |
投稿日 | : 2007/03/13(Tue) 16:56 |
投稿者 | : 太田述正 |
コラム#1690「日本人のアングロサクソン論(その2)」のさわりの部分をご紹介しておきます。
糸瀬氏は、この本の中で、次のようなことをおっしゃっています。 →の後に記されているのは私見です。
「・・<アングロサクソンの会社においては、>見事な「公私の区別」が行なわれています。」(29頁)・・
→軍隊、特に有事における軍隊は、命のやりとりに従事しているのであり、個々の将校や兵士の私の部分にかかずらわっているわけにはいかないことはお分かりでしょう。
「日本の会社における経営会議<では、>ほとんどの重要案件は、経営会議の前の段階での「周到な根まわし」によって、あらかじめ結論が決まっています。そして根まわしの段階で働く力学は、政治的(人事的)力学であり、その会社が「目指すべき経営」というものを客観的に見据えたものではありません。・・」
→参謀(=幕僚=staff)は軍隊で生まれた職務であり、将校は、参謀が務まるように、目的合理的な思考をして、論理的な意見具申を行うように、幹部学校の指揮幕僚課程(CGS。旧軍の陸軍大学にあたる)で徹底的に教育訓練されます。 ・・
「アングロサクソンの社会では、・・それぞれの専門分野において、それなりの市場価値を有するプロに<ならなくてはいけません。>・・それぞれの現場で一流のスペシャリストとして名を成・・した<人物>に、たまたまリーダーシップやカリスマ性、さらに経営管理能力(マネジメント・スキル)や外部との交渉能力が備わっていた「結果」、社長や会長の職に就いてい<く>のです。」・・、
→軍隊の将校も兵士も、歩兵・火砲・戦車といった特定の職種の専門家としてスタートを切るのであって、下士官まではジェネラリストはいません。将校だけは、将軍(general!)以上になって初めてジェネラリスト(generalist)が出現します。
「採用にあたっては、人事部は一定の役割を果たしますが、・・現実の採用決定は、・・実質的に分社化されている・・各部門の現場のスペシャリスト・・による数度のインタビューを経たあと、最終的には各部門の最高責任者に託されています。・・入社後の昇進・昇給も・・一目瞭然に数字で表現され<た>・・個人の業績がとことん反映され<た形で>・・現場に一任され、人事部の出る幕はほとんどありません。」、
→私が防衛庁に入った頃(1970年代初頭)の陸上幕僚監部は、米国の陸軍のやり方をマネて、職種の名前を冠した課が陸上幕僚長に直結する形で沢山設けられており、職種の将校の人事は、事実上それぞれの課が行っていました。
「・・「360度人事評価システム」と呼ばれるもの<がありま>す。・・360度とは、文字どおり上下左右の方向を示しており、人事評価が、上司、同僚(複数部署)、部下の四方向から行なわれるというものです。・・<この>360度人事評価システムは、・・その客観性と透明性ゆえに、その結果が、評価される人にも受け容れられる・・のです。」
→いやーなつかしい。私は若い頃(1970年代末)に陸上自衛隊の将校の人事を担当したことがありますが、陸上自衛隊が、まさにこの360度人事評価システムをやっていました。今にして思えば、これも米陸軍からの直輸入だったのでしょう。
とまあ、こんなわけで、糸瀬氏のおっしゃることもまた、私にとっては、すべてかつての職場における旧聞に属するのであって、全然面白くありませんでした。
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