タイトル | : コラム#1691(未公開)のポイント |
記事No | : 165 |
投稿日 | : 2007/03/14(Wed) 22:34 |
投稿者 | : 太田述正 |
コラム#1691「英国のガーナ統治がもたらしたもの」のさわりの部分をご紹介しておきます。
・・国連事務総長は、現在、韓国出身の第8代の潘基文ですが、この潘基文(旧日本領)とペルー出身の第5代のデ・クエヤル(旧スペイン領)を除けば、旧植民地出身者は、ビルマ(ミャンマー)出身の第3代のウ・タント、エジプト出身の第6代のブトロス・ガリ、そしてガーナ出身の第7代のコフィー・アナン、といずれも旧英領出身者です・・。 他方、旧仏領出身者は皆無です。 英国の植民地統治は、戦後世界のリーダー達を輩出した、と言えそうです。 しかし、ミャンマーもエジプトもガーナも、独立後の歩みはお世辞にも高い得点はつけられません。 ガーナについて、・・もう少し見てみましょう。 ・・独立当時、ガーナの1人当たり所得は英国の39分の1に達していました。 ところが、現在ではガーナの1人当たり所得は英国の92分の1になってしまっています。そして、国際機関や外国からの経済援助がガーナのGDPの16%、政府支出の73%を占めています。 すべてをだいなしにしてしまったのが、ガーナ独立の父とも言うべきエンクルマ(Kwame Nkrumah。1909〜72年)でした。 エンクルマは、英植民地当局がガーナにつくった名門アチモタ(Achimota)中学を卒業し、ガーナのカトリックの修道院で更に学んだ後、米国のリンカーン大学で学士号、ペンシルバニア大学で修士号を取得した人物です。 ・・この学校の卒業生には、エンクルマのほか、後にガーナの元首となったローリングス・・及び同夫人や、ガンビアの初代元首のジャワラ・・ジンバブエの悪名高い現在の大統領のムガベ・・及び同夫人がい<ます>。 独立後、ガーナの最高権力者・・となったエンクルマは、政府支出を約10倍、役人の数を約5倍にに膨張させ、役人に自分の政党の支持者達を採用しました。また、選挙は一回目以降は形骸化させてしまいます。 ・・私自身、旧英領のサハラ以南のアフリカ諸国が、中共やインド並の経済高度成長をしてしかるべきだとは全く思いませんが、ほぼ軒並み、独立当時より相対的に政治・経済状況が悪化しているというのは、どう考えても<英国の>植民地統治のせいに違いないと思うのです。 決定的なのは、・・教育への配慮がほとんどなされなかったことではないでしょうか。 英領ガーナの植民地当局が、中等教育がろくに行われていなかった中で、アチモタのような超エリート校を一つつくったこと・・は、その卒業生に鼻持ちならぬエリート意識を植え付け、大衆蔑視、大衆操作の独裁者、及びそれを取り巻く特権階級への道を歩ましただけだ、という気がします。
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