タイトル | : コラム#1695(未公開)のポイント |
記事No | : 176 |
投稿日 | : 2007/03/18(Sun) 15:35 |
投稿者 | : 太田述正 |
コラム#1695「日本人のアングロサクソン論(続)(その2)」のさわりの部分をご紹介しておきます。
・・<さて、>渡部氏<は>、「フランス語」が一時期イギリスの公用語になったということが、後で「イギリスの対フランス、対大陸への劣等感」(116頁)を語り、しかもその「劣等感を消した男」としてウォルポール・・を持ち上げる・・ための伏線の一つと<しています>。 <しかし>そもそも、イギリスに全般的な対仏劣等感があったという話は寡聞にして私は知りません。・・ <逆に、>イギリス人<は>フランスに対して確固たる優越感を抱き続けてきた・・と確信しています。 11世紀末から13世紀初頭のイギリス人が、・・建築、美術、ファッション、料理、音楽等、宮廷文化に淵源を持つところの、広義の芸術(art)の分野ではフランス、ひいては欧州大陸に対して劣等感を抱いていたでしょうが、それは現代においても全く変わっていません。 他方、ずっと以前に(コラム#54で)ご説明したように、アングロサクソン時代からイギリスは、経済的に欧州地域と比べて抜きん出た豊かさを誇ってきましたし、政治的には欧州地域には全く見られないところの、コモンローと議会主権・・に裏打ちされた自由を享受してきました(コラム#90、#1334)。・・ しかも、イギリス人は自分達は軍事的にも卓越していると思ってきました。 英仏百年戦争の際、イギリス軍が、クレシー(1346年)、ポワティエ(1356年)やアジンクール(1415年)の戦いで、3倍から6倍の仏軍と戦い、相手に20倍から100倍の損害(戦死者と捕虜の計)を与えたことは特に有名ですが、フランス人の方でも、14世紀の文人フロワサールが、「イギリス人は、戦さに強い国王か武器や戦さを好む国王でなければ崇敬し、お追従しようとはしなかった。彼らの地イギリスは、平時よりも戦時の方が富に満ち溢れたものだし、イギリス人は(富をもたらしてくれる)戦闘と殺りくに無上の快感を覚える」と語っているところです(拙著『防衛庁再生宣言』日本評論社 203〜204頁)。 ですから、現在のイギリス人がフランスに対して優越感を抱いている・・ように、11世紀末から13世紀初頭のイギリス人だって、フランスに対して優越感を抱いていたに違いないのです。
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