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タイトルコラム#1720をめぐって
記事No293
投稿日: 2007/04/10(Tue) 08:24
投稿者田吾作
「特に戦後に教育された日本人が、建設的な議論を交わすための必要最小限の常識を身につけていないことが大きな原因の一つだ、と私は思うのです。」という意見に私は同意しますが、残念な事に普通の日本人から見れば太田さんの方が異常に見えると思います。

私は以前、勤務先の同僚で地元の消防団の分団長をしている者に、「火に水をかけたらどうして消えるのか?」と質問して答えてもらえずに、以後「宇 宙人」扱いされた経験があります。さすがに「消防研究所」にメールで質問したところ返事をもらいましたが納得できる回答ではありませんでし た、要するに大人が子供のような必要最小限の常識を質問をするという前例が無いわけです。また免許更新の際に、警察の交通に関する専門部署である交通セン ターの職員に「車は道路をどのように走っているのか?」という質問を文書にして持って言って質問したのですが(前例が無いせいだと私は考え ますが)回答はもらえませんでした。

理論的には「共通知識」(注1)の適用範囲の問題(日本社会は同心円集団の寄せ集め・・大前 研一)だろうと私は考えています。つまり、時速 6Km(徒歩)を強制された過去の日本社会では「共通知識(同心円集団)」の範囲は「鉄の必然性」により徒歩で動ける範囲(部落)内だった(狭かった)と 言う事です。

(注1)「・・『共通知識』ということばはさまざまに用いられるが、ここでは、厳密な定義に限定しよう。集団の中で、ある事象あるいは事実につい て、皆がそれを知っており、皆がそれについて知っていることを皆が知っており、皆がそれについて知っていることを皆が知っていることを皆が知っている・・ 場合に、それを共通知識という。・・」
「儀式は何の役に立つか」 マイケル・S−Y.チウェ著 2003年 株式会社新曜社 発行 ISBN4−7885−0872−9 P11より引用

明治維新以後、上からの改革で工業化(高労働生産性産業化)が推し進められましたが、「共通知識(同心円集団)」の範囲は拡大せず、最近になって 共同体の破壊が進み(地方住民のテレビインタビューの質問に対する回答があまりなまりのない標準語でなされるようになりました)、ようやく戦後に教育され た日本人に標準語教育の成果が現れているのだと私は感じます。

我々日本人の歴史に関する私の見解がまだ固まっていないので暫定的な意見になりますが、昭和23年生まれの私の小さい頃はまだ共同体があちこちに 残っていました。大学時代の会合でも30分位の遅刻は当たり前でしたので共同体の名残(労働生産性が低い=時間的余裕がある)であったと私は解釈します。 現在地元の自治会の活動では驚くべき事に時間に対する精度は5分位になり、地域住民を取り巻く環境(単位時間当たりに多くの物事をこなす事が要求される) の変化が「鉄の必然性(30分の価値が大きくなり、5分以上待つのを『ムダ・苦痛』に感じるようになった)」となって住民の行動を変えたのだと私は考えま す。

恐らく自動車等の高速移動手段(時速60Km)の普及が移動範囲を拡大し、移動範囲内に多くの他人(内人に対する外人)が存在するようになったの で方言が主流で無くなり標準語が日常的に用いられるようになり、多くの狭い同心円の殻が壊され広い同心円たる国家に移行している途中なのが現状だろうと私 は考えます。(この項はまだ良く分からない)

現在の日本人は標準語を日常語として使用する事が出来ますが、和語(日本語の意味)(注2)との関連は教えられていないので、言葉の意味は各々勝手に解釈しているし、察しの文化として厳密に定義(注3)しないのが暗黙の前提になっているのだと私は考えます。

(注2)「・・修好 通商 条約・・むつひののり(睦びの則)をさた(定)めて、ものうりかふ(売買)べき、ちぎりのしるしふみ(条約)・・」(日米修好通商条約批准におけるアメリカ合衆国大統領宛将軍親書)

(注3)「・・熱(heat)という言葉は、素人っぽい感じで、科学的ではないようだけれども、これで十分にあいまいさなく〈測定しうる量〉を、 表わすことができる。なぜならば、『熱』と量を表わす言葉とをあわせて使えば『どれだけの量の熱』のことを言っているのかがわかるからである。私たちは、 熱という言葉には、『熱いもの』という抽象的な意味は持たせない。もし『新しいミルクの〈熱〉』と言いたい時には、〈より科学的な言葉〉である『温度』を 使って、『新しいミルクの温度』と言うべきである。・・」(”Theory Of  Heat” James Clerk Maxwell)

私はアメリカの実情は知らないので、アメリカの小学生用国語辞書(ウェブスター英英和辞典)を読んだ知識(付けたり4)から言うのですが、小学生 の知識がどの程度あるのかを良く意識して、言葉の意味を小学生に理解できる意味を用いて説明(注4)し、辞書全体が統一された意味の塊になっており、言葉 の意味が意味の塊の中でどのような位置を占めているのかが説明されている(語源や類語の説明が数多く,しかも詳細)ので外国人の大人が利用するのに丁度い いと思っています。このことは人種や宗教等がバラバラな個人より形成されている社会の「共通知識」を作り出す事が小学生の教育より意識的になされている (小学生が同じ辞書を使えば「共通知識」が形成される)と私は感じています。日本では「世界は一家、人類皆兄弟」という意識なので、逆に意識して「共通知 識」を作り出す事がなされないのだと私は考えます。

(注4)「・・これらすべての読者層に満足を与えるために次のような基本的な編集方針が必要であった。一般用:基本的な単語は簡単な言葉で説明 し、互いに未定義の用語での説明をさける。基本的な概念は、必要ならある程度の長さの説明を加える。高度に技術的な単語は相互参照を充実して見出し語をた どれば求める単語が見つかるようにする。技術者用:一般に認められている用語以外に、専門家の使う述語や用語も含めること。・・」(コンピュータ用語辞 典)(付けたり5参照)

以上より私の考えでは「改めて思う不思議なニッポン」は誤りであり、「改めて思う不思議なニッポン人(私)」というのが現実なのだと思います。

タイトルRe: コラム#1720をめぐって
記事No296
投稿日: 2007/04/10(Tue) 19:54
投稿者しまだ
> 私は以前、勤務先の同僚で地元の消防団の分団長をしている者に、「火に水をかけたらどうして消えるのか?」と質問して答えてもらえずに、以後「宇 宙人」扱いされた経験があります。さすがに「消防研究所」にメールで質問したところ返事をもらいましたが納得できる回答ではありませんでし た、

燃焼の3要素を、酸素、温度、燃焼物と漠然と記憶していたのですが、違うようです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E7%84%BC
燃焼の3要素:可燃性物質、酸素、火源
燃焼の3T:燃焼温度 (Temperature)、滞留時間 (Time)、空気との混合状態 (Turbulance)

火に水をかけると、
(1)水が可燃性物質と酸素を隔離するとともに、
(2)可燃性物質の熱を奪って燃焼温度以下にし、
(3)空気との混合状態を解消するために、
上記の燃焼の必要条件を満たすことができなくなるので、火が消えるのですかね。

(1)と(3)が同じことのような気もしますが。

タイトルRe^2: コラム#1720をめぐって
記事No331
投稿日: 2007/04/23(Mon) 23:28
投稿者田吾作
ルートディレクトリ(最上位のファイル)のように、物事を根源(ルーツ)まで遡れば問題としている現象は大元よりの分岐として表現できます。私が同僚に質問した当時は量子電磁力学(Quantum electrodynamics) の知見が消火理論にも反映されているだろうと単純に考えていたからで、そのような単純な発想の持ち主である私に対して同僚は、世の中の複雑性(最新情報は即座に世の中に反映されるわけではない)を理解しない人間(宇宙人)とみなしたのだと思います。

 私は現在、「消火理論」については根源を物質の発生(ビッグバン理論)まで遡れば、そこから分岐した問題として扱えると考えています。「消火」 という行為を劇場での役者の演技だと捉えれば、「劇場」が地球で「主演役者」がO2(酸素分子)・H2O(水)分子・C(可燃物中の炭素原子)だと私はみ なしています。

物質の発生(宇宙開闢)が約137億年前(日本語版ウィキペディア「ビッグバン」より、以後の用語の定義はウィキペディアを参照した)で、「・・ ビッグバンで始まった原初の宇宙では水素とヘリウムのみが生成したと考えられている。それ以外の元素は恒星中心核での熱核融合反応により生成し、新星爆発 により恒星外に放出されたと考えられている。・・」(元素)事から「役者」が先に誕生して、「地球・・誕生してから約46億年経過・・太陽系の誕生とほぼ 同時に形成・・10程度のミニ惑星の衝突合体によって形成・・」(地球)、ミニ惑星は「・・新星爆発により恒星外に放出された・・」(元素)かけらから形 成されたので、「劇場」は相当遅れて誕生した事になります。

役者と劇場がそろったので演技が始まるかというとそうではなくて、まず舞台装置(注1)が必要になります。生命の誕生と植物の光合成と酸素の関係 (注2)については学習中でまだ良く分かりません。消火するには火が燃える必要があり、地球上には可燃物と酸素が存在するのになぜ今まで燃え尽きなかった のかという問題もあります。(注3)消火に用いる水についても制約条件があります。(注4)

(注1)「・・46億年前に原始の地球が誕生した直後には、高温状態の中で岩石から放出された揮発成分が化学反応を起こし、現在とは全く異なる組 成の原始大気が地球を取り巻いていたと考えられています。原始大気の主成分は二酸化炭素と水蒸気であり、それ以外には、現在の火山ガスにも含まれる塩化水 素(HCl)や二酸化イオウ(SO2)がありました。その後、地表の温度が低下すると、大気中の水蒸気が凝結して海が作られましたが、初期には、原始大気 が含有していた塩化水素が溶け込んで、強い酸性を示す塩酸の海となっていました。現在の海水に含まれる水と塩素イオンの大半は、この当時のものです(水量 の変化に関しては、いくつかの説があります)。
 酸性の海は、土壌中に含まれるカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・カリウムなどの金属成分を溶かし出す一方、自身はイオン交換によって中 和されていきました。海水がほぼ中和されると、それまでの酸性水に溶けなかった二酸化炭素が大量に海水に溶け始めます。水中のカルシウムやマグネシウム は、二酸化炭素が水に溶けて生じた炭酸イオンと反応して水に溶けにくい炭酸塩(炭酸カルシウム・炭酸マグネシウム)となるため、海水中から除かれます。ま た、カリウムは、イオン半径の違いからナトリウムに比べて粘土鉱物に吸着されやすいという性質を持っており、海水から粘土へと移行していきました。こうし てナトリウムが取り残され、地球誕生後10億年ほどで、塩素イオンとナトリウムイオンを主成分とする海水ができあがったのです。・・」
http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/qa_a89.htm#q539

(注2)「・・光合成は巨大な規模で行われています。毎年、百兆キログラムの炭素が空気中から取込まれて炭水化物に変化しています。この方法で毎年貯蔵されるエネルギーはおよそ10の18乗キロジュールで、それは地球全休のエネ ルギー消費の約30倍です。・・大気中の酸素は、そのほとんどすべてが、緑色植物中にある生物学的な発電所の汚染廃棄物(植物の立場から見て)なのです。・・」(新ロウソクの科学)

(注3)「・・現在の大気中の酸素の割合が概ね適正だと判断できる面白い実験がある。これはもちろん理論的な裏づけにもなる。・・酸素濃度が21 パーセントを超えると、火事になる危険性が高まる・・酸素濃度25パーセントで火花から引火する可能性は約10倍に増加する。・・酸素濃度が13パーセン ト以下では火災は起こらないが、25パーセント以上になると非常に激しい火災が起こるため、森林が成熟するのは不可能に思われる。・・約三億年前の石炭紀 には酸素濃度が35パーセントだった・・当時の埋没炭素量が非常に多かったその多くが現在狭炭層として発見されていることから考えると、大気中にはそれに つりあうだけのずっと多くの酸素がなければならなかった・・考慮すべきは、空気中にもっと窒素があったという点だった。燃えやすさを決定するのは酸素の量 ではなく、窒素と混ざった場合の比率なのだ。地球の窒素の約40パーセントは、現在地中に埋まっている。石炭紀にはその窒素はおそらくまだ埋まっておら ず、空気中に存在し、木々にとってより安全な酸素の比率を保っていたのだろう・・」(ガイアの復讐)

(注4)「・・自然界では気温が20度Cを大きく上回ると、生命維持に欠かせない水を手に入れるのが難しくなる。・・気温が25度Cを上回る場所では蒸発があまりに速いため、雨が続かなければ土は乾き、土地は砂漠化する。・・」(同上)

現在の劇場(地球)は1気圧で平均気温15度なので核反応の可能性は無く、役者は化学反応と物理的反応の範囲内で活動する事になります。

私は燃焼について良く分からないので現在学習中ですが、「消火」という行為は「燃焼」があって始めて行われる行為なので燃焼について理解すれば、燃焼を起こさせない事が「消火」という行為になると思われます。

「・・現在の化学者は反応を原子や電子の再配列として理解している。電磁的な引力による電子の移動から始まって,一見,起こりえないようにみえる 変化を可能にしている不思議な量子力学的トンネル過程に至るさまざまな再配列を行わせているのは, 原子および亜原子のレベルにおける複雑な力である。・・今では,物 質は本来量子力学的であって,しばしば常識に反するようにみえる微妙な量子力学の法則が反応の結果を究極的に決めることがわかっている。物質の変化を支配 するのは量子力学だが,原料から新しい物質が生成することの裏に潜んでいる駆動力は,エン卜口ピーが増加し,より無秩序な状態に崩壊しようとする自然界の 傾向なのだ。化学者たちは,いかなる反応においても, そこで起 こっている各段階を精密に描きだすことが遂にできたと思ったのだが,反応の中には予想された過程に従わず,カオス的な振動をもたらすものがあることを知っ てきわめて大きな驚きに見舞われている。・・」(新ロウソクの科学)

「・・硬貨を机の上で垂直に立てようとすると、うまく立たず、すぐ倒れる。それは底面が小さくて、少し傾いてもその重心を通る線が底面の外側に出 てしまうからである。これは張り渡した綱の上で綱渡りをするのに似ている。硬貨をひと押しして、硬貨の中心を通って、硬貨の面に垂直な軸のまわりを回転さ せる。直線運動に慣性があるように、回転運動にも慣性がある。外部から力が加えられて、その硬貨の回転状態に変化が生じないかぎり、硬貨は永遠に回りつづ けるはずである(角運動量の保存)。しかし、実際には、つねにある程度の摩擦力が机と硬貨のあいだで働くので、動きはゆっくりとなり、ついに倒れる。 し かし、倒れる前に、硬貨は右か左に曲がる。ここには教訓的な特徴がある。硬貨が左に曲がるか右に曲がるかは、“実際には”予測できない。硬貨の動きは、原 理的には決定されており、単一の仕方でふるまうことを決定する運動法則によって支配されているが、しかし予測はできない。ここには、その動きに影響をあた える非常に多くの、未知の、そして制御できない要因があるからである(たとえば、硬貨の縁に少し傷があるとか、机が真っ平らで無いとか、微風の小さなゆらぎがあるとか、机が突然振動したとか、等々)。
したがって、それらの動きを予見したり、完全に考慮しつくしたりすることは、不可能である。教訓『決定論はかならずしも“現実には”予測可能性を意味するものではない』。これは“カオス”現象として知られる事柄の鍵となる特徴である。・・」(パズル・身近なふしぎ)

燃焼に使用された酸素(O2)は炭素(C)と化合してガスとなり、消火に使用された水(H2O)は水分子となっていずれも大気中に拡散しますが、 「物質とエネルギー不滅の法則」によりいずれば酸素(O2)、炭素(C)、水(H2O)になって帰ってこなければ反応は完結しません。しかし、大気中の水 分子を構成する原子である水素(H)はわずかながら宇宙空間に逃げ出していますので、宇宙全体を見た場合物質・エネルギー保存の法則は成立しますが、地球 上の大気中では成立しません。したがって地球上では同一の現象は二度と起こりえない事になります。また燃焼や消火によって生じた原子・分子は大気中に拡散 してしまい、新たに供給される酸素(O2)、炭素(C)、水(H2O)は地球誕生以来大気中をさまよっていたものなので、我々は地球全体で繰り広げられる 複雑な物質循環の一部分を燃焼や消火という形で一舜の間だけ見ている事になります。

以下の説明中の「・」はラジカル(一つの不対電子をもつ科学種)を意味します。
「・・ラジカル反応は燃料の燃焼には不可欠のもので、ファラデーがロウソクに点火した時、 彼はラジカルの洪水を解き放ったのでした。・・一度多少のラジカ ルが生成すると、それに続いてほとんど無限の多様性をもつ反応が起こる可能性があります。すなわち、たくさんの水素原子がメチルラジカルから引抜かれて炭 素を含むラジカルができると、それらは互いにくっつき合ってほとんど純粋な炭素の粒子に成長して煙になります。ロウソクの炎の場合のように燃焼混合物中に 酸素が不足していると、各炭素粒子は数干の炭素原子を含むようになるまで成長するでしょう。これらの粒子は炎の温度で光り輝きます。すなわち、炭素の励起 電子が広範囲の波長の放射線を放射して黄白色に輝くので 。・・燃焼はラジカルで伝播することがわかれば、不本意な大火災を制御す る方法を見つけることができます。もし、反応のネットワークの中に割り込んでラジカル連鎖をそらしたり終結させたりできれば燃焼はおさまるでしょう。一つ の方法は炎の中にハロゲン原子を注入することです 。それ は、炭化水素分子の水素原子が次の反応でハロゲン原子に引抜かれるからで 。

Br ・ +H−CH3 ――> Br―H+ ・ CH3

ここで ,HBr 分子がヒドロキシルラジカルの攻撃に対する囮(おとり)になります 。

・ OH +H―Br ――>HO―H +Br・

このようにしてラジカル連鎖が炭化水素から脇にそらされ、ハロゲン原子は再生されて方向転換反応の中に再び入り込むことができます。このラジカル方向転換反応はある種の消火器の原理になっています 。また、繊 維を耐火性にするのにハロゲン含有化合物を繊維に埋込んだり、実際に結合させたりすることもあります。このような繊維では、繊維が燃え始めると化合物から臭素が出てきて連鎖を終結させるのです。
 ロウソクのろうや木材などの炭水化物のような固形燃料の燃焼は、燃える前にまずある程度分解されたり気化したりする必要があるという点で、蒸気 や気体の燃焼と異なります。すなわち、固体の燃焼における第1段階は、表面近くの分子が分裂して、上方の空間に逃げ出すことです 。その空間では、ここに述べてきたような連鎖過 程によって燃焼が起こります。この表面における分裂は上方での燃焼によって維持されます。表面近くの炎の層から供給される熱によって表面が激しく打ち壊さ れる結果、結合が切れて、破片は互いに再結合するより先に表面から逃げ出します 。表面での分裂が炎の伝播に必要な過程であることから、消火の別の方 法が出てきます。それは、表面の分解および分裂を阻止する物質を含有させることです。たとえば、リン酸塩を加えると、炎の熱による最初の急激な反応によっ て表面が封印され、燃料の分裂や気化が防止されます 。・・ 酸素との結合は今でも酸化とよばれていますが、現在酸化という用語はずっと広範囲の反応に使われていて、酸素との結合は酸化の特殊な場合になっていま す。・・すなわち、酸化とは電子を失うことです。・・酸素が含まれていないけれどもよく似ている反応を考えてみると、酸化の意味をこのように一般化するこ との威力がよくわかります。.たとえば、マグネシウムは塩素ガス中で燃えて固体の塩化マグネシウムが生成します。

Mg(s)+C12(g) −→ MgCl2(s)

ここでも 、同じ基本反応が起こっています。すなわち、マグネシウム原子が別の元素に電子を受渡しているのです。マグネシウムは電子を失っているのですから、酸素は 存在していませんが、酸化の定義によって、マグネシウムは酸化されたのです。この場合 、私たちは、反応に付随している飾りではなく、反応中に起 こっている本質的な過程を識別しているのです。・・燃焼反応は自発的なのに、その逆反応はそうでないのはなぜか、という疑問です。・・燃焼反応が起こる と、・・多量のエネルギーが熱として環境に放出されます(訳注:熱を放出する反応を発熱反応といいます)。この熱の放出は大きなエネルギーの分散となっ て、それによって生ずる乱れが、反応に伴う物質の乱雑さの変化を圧倒してしまいます。その結果 、メタンが燃えると、宇宙全体としての乱雑さがそれ以前に比 べてより大きくなり、したがって燃焼 反応が自発的となります。・・大多数の反応の活性化温度は日常生活の温度よりはるかに高いので、試料中のほとんどすべての分子は反応することができません 。・・ある 反応を速くしようと思えば、温度を高くしボルツマン分布の裾を伸ばすな どして、活性化エネルギー以上のエネルギーをもつ分子の割合を増やさなければなりません。高温ではすべての分子が危険な状態になります。 水を かけて火を消す古典的な消火方法は、ボルツマン分布と反応の活性化エネルギーとを利用しています。水の蒸発は著しく吸熱的であるために、温度が大きく下 がって燃焼反応が停止するのです。この方法はきわめて効果的ですが面倒で、時には不適当な場合もあります。水酸化アルミニウムを炎に散布する消火法は水を 使う方法を近代化したものです。この場合、高度に吸熱的な脱水反応

2Al(OH)3 ――> Al2O3 + 3H2O

が起こることによって温度が下がり、連鎖反応が伝播できなくなって炎が消えるのです。・・火災を消すのに水を使う理由の一つは、水の蒸発がたいそ う吸熱的で燃焼物質の温度を著しく下げるために、火災を起こしている物質のエネルギーが燃焼反応の活性化障壁を越えるのに十 分でなくなるからです。・・」(新ロウソクの科 学)

以上は私のつたない要約にすぎません。最終的には量子力学での説明までたどり着かなくてはなりませんが、現在学習中なので私には説明能力がありません。