タイトル | : コラム#1734(未公開)のポイント |
記事No | : 307 |
投稿日 | : 2007/04/15(Sun) 18:11 |
投稿者 | : 太田述正 |
コラム#1734(2007.4.15)「宗教を信じるメリット?(その5)」のさわりの部分をご紹介しておきます。 ・・ そこで、私の見解ということになるのですが、私はもとより、専門家ではないので、日本の社会科学者に、ぜひ宗教を信じるメリットの最終的な解明を成し遂げて欲しいと思っています。 なぜなら、日本の社会科学者しか、それはできないと考えるからです。 現在社会科学が最も進んでいるのは米国ですが、米国におけるこの種研究には限界があるからです。 どうしてか? ・・ ・・米国はいわゆるアブラハム系宗教の信者が圧倒的に多い国であり、しかもすこぶるつきの「敬虔な」アブラハム系宗教の信者が多い国である、という点で、世界でも稀な異常な国である<から>です。(強いて言えば、サウディアラビアが米国に似ているかもしれません。) そしてこの関連でと申し上げてよいと思いますが、・・2005年の世論調査によれば、米国の成人の54%は進化論が誤りだと思っており、1994年の46%より比率が上昇しています。 つまり、このところ、「敬虔」な信者の割合が増えつつあるという意味でも、米国は世界の潮流に反する異常な国なのです。 こんな米国で、宗教・副産物説であれ、宗教・適応説であれ、社会科学者達が、進化論の立場から、宗教のメリットを解明し、宗教の神秘のベールをはがそうとしていることには敬服せざるをえません。 ・・ また、同じアングロサクソンとは言っても、米国と違って世俗的な国である英国の社会科学者は、世界では宗教を信じる人が大部分であることから、世界中を敵に回しかねないこの種の研究は敬して遠ざけているのではないでしょうか。 だからこそ、私は、世界で最も世俗的な国であり、しかもアブラハム系の宗教の信者が極めて少ない国であり、かつ、アングロサクソンなるグローバルスタンダード文明に属さないことから英国の社会科学者のような配慮が必ずしも必要でないところの、日本の社会科学者に期待するのです。 もっとも、その前に、まず日本の社会科学全体の水準を引き上げる必要があります。 ・・ <さて、>このシリーズを読んでこられた方には想像がつくでしょうが、私自身は、宗教・適応説より宗教・副産物説の方に軍配を上げたいと思っています。 ただし、それはアトラン自身のウィルソン批判のように、宗教・副産物説が、宗教とイデオロギーを区別せずに論じていて、宗教固有のメリットを説明できていないからではありません。 そもそも私は、・・非常識な物語を人間に信じさせる宗教と、政治的・経済的・科学的に一見説得力のある理論を人間に提供するところのイデオロギーとを截然と区別する考え方をとらないのです。 ・・私は、「非常識」に立脚する宗教も、ある時代のある場所における「常識」に立脚するイデオロギーも、どちらも人間の思考や行動を制約したり歪めたりするドグマであるという点で同類だと思っているのです。
まず、どうして私が、宗教・副産物説の方の方がもっともらしいと思っているかをご説明した上で、宗教、とりわけアブラハム系宗教の「危険性」について私見を申し述べることにします。
(続く)
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