タイトル | : コラム#1768(未公開)のポイント |
記事No | : 387 |
投稿日 | : 2007/05/14(Mon) 21:22 |
投稿者 | : 太田述正 |
コラム#1768(2007.5.14)「米国とは何か(続々)(特別編3)(その2)」のさわりの部分をご紹介しておきます。 ・・ 18世紀には、1776年から1788年にかけて、ギボン・・が『ローマ帝国衰亡史・・』を上梓した、それはキリスト教にローマ衰亡の主たる原因を求めたものだった・・。 19世紀に入ってからは、いかなる帝国も滅びる運命にあるという論調が出現した。 英国を代表する詩人の1人であるバイロン・・<や>米国の画家のコール<がそうだ。>・・。 ギボンにせよ、バイロンにせよ、コールにせよ、特段英国や、いわんや米国が没落するという予感の下でこんなことを書いたり描いたりしたわけでは必ずしもない・・。
しかし、最近の米国では、帝国的責任と帝国的野心溢れるところの米「帝国」の没落の予感が蔓延している。 確かに、ローマ帝国同様現在の米国も、軍が課せられた全ての任務を遂行するに必要な、そして強大な軍を維持するために必要な、ヒトもカネも意志も不足していることは問題だ。 果たして米「帝国」もローマ帝国同様衰亡してしまうのだろうか。 考慮すべきは、米国にはローマにはない強みがあることだ。 一つは、ローマのエリートは、ローマの大多数の人々の生活を向上させようなどとは考えなかったのに対し、米国の人々は自己改善が全ての人々の改善につながると信じていることだ。・・ 米国にはもう一つ、より重要な強みがある。 ローマは素晴らしい街道や下水溝をつくることができる熟練した技術者を有していた。しかし、実業家はもちろんのこと、発明家もさして人気はなかった。 要するにローマは、アイディアを貪欲に吸収はしても新たに生み出すことが少なかったのだ。 これに対し、米国ではビル・ゲイツ・・に対し、ローマ帝国の「暴君」皇帝カリグラ・・でさえ想像もできないほどのな富と権力を与えている。
・・私のコメント<は以下の通り。>
私は、米「帝国」は、本当に帝国になった瞬間に衰亡過程に入る、と考えています。 米国が帝国化しつつある兆候は二つあります。
一つは共和主義の形骸化です。 ・・(コラム#1431<参照>)・・。 ・・ もう一つは、キリスト教原理主義の浸透です。 生まれた頃のキリスト教はキリスト教原理主義であったと言ってもいいでしょう。 ギボンはそこにローマ衰亡の主たる原因を求めたわけですが、ローマにおけるキリスト教の浸透と帝政の成立はほとんど同時であったことを思い出してください。 私は、現在進行中の米国のキリスト教原理主義化(コラム#581、588〜590)・・キリスト教の先祖返り・・は、米国が帝国化しつつある兆候である、と考えているのです。
(完)
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