タイトル | : コラム#1791(未公開)のポイント |
記事No | : 468 |
投稿日 | : 2007/06/02(Sat) 20:37 |
投稿者 | : 太田 述正 |
コラム#1791(2007.6.2)「地球温暖化問題でのブッシュの豹変」のさわりの部分をご紹介しておきます。 ・・ EUは<現行の京都議定書が失効する>2012年以降の目標として、これ以上の地球温暖化を摂氏2度に押さえることとし、そのために必要な温暖化ガス排出量の削減を2015年から2020年までに実現しようとおり、近々ドイツ・・で開催される世界8カ国首脳会議での合意とりつけを目指して主催国ドイツのメルケル首相は、この案の根回しを行ってきました。 この案を今年12月に開催される国連の会議に上程しようというのです。 しかし、そもそも京都議定書そのものに反対してきたブッシュ政権は、このドイツ案にも拒否反応を示していました。 ・・ そんなところへ、5月31日、ブッシュ大統領は、この秋から、温暖化ガス排出大国15カ国・・1位は米国で、中共やインドも含まれる・・の会議を開催し、各国ごとの温暖化ガスの排出量減少の中期的な目標の設定とクリーンな技術への投資の増大、について来年末までの間に合意を形成することを目指したい、という提案を行ったのです。 これまで、地球温暖化の原因が人間にあることを認めず、温暖化ガス排出量の削減に反対してきたブッシュが、態度を豹変させたわけです。 ・・ この提案に対しては、これまでずっと地球温暖化問題に取り組んできた人々からは、ブッシュは、まず自分は間違っていましたと謝罪すべきだったとか、ブッシュに地球温暖化問題で国際会議を主催させるなんてユダヤのヘロデ(Herod the Great。BC74?〜BC4?)王に保育園を開かせるようなもの・・だとか、この問題で新しい国際会議の必要性など皆無でありブッシュは国連の妨害をしようとしている、といった厳しい批判が投げかけられています。 ・・ メルケル首相は、この提案に対し、一応歓迎の意思表示をしました・・。 ハーパー(Stephen Harper)カナダ首相、ブレア英首相、安倍首相、及び豪州の外相<も>歓迎の意思表示をしました。 ・・ ところが、日本政府の反応は、豪州政府とともに、ブッシュ提案に積極的に賛成している・・という点で、ドイツ、カナダ、英国の各政府の反応とは明らかに異っています。 そもそも安倍首相は、先週、温暖化ガス排出量を2050年までに半分に削減することを目標とする、包括的だが拘束力のない国際協定締結という構想を発表しています。 米・中・印等をその気にさせるためにはこの方法しかない、というわけです・・。 ・・ しかしこれは、ブッシュ政権の「指示」を受けて、ブッシュ提案の露払い的に観測気球を上げさせられた可能性が大だといった類の批判が、環境保護団体の中から出ています。 また、ドイツ等に比べて日本の温暖化ガス削減実績が芳しくない・・日本は1990年水準から6%削減する義務があるが、現状ではまだ1990水準を14%も上回っている・・ので、次の協定を拘束力の弱いものにしようとしている、という穿った見方も一部で出ています。 ・・ 世銀のウォルフォヴィッツ総裁を擁護した時もそうでしたが、地球温暖化問題での上記のような対応を見ていると、米国の保護国たる日本の悲哀を痛切に感じます。 ・・ しかし、米国世論もカリフォルニア州あたりから急速に変わりつつあり、ブッシュ政権のイラク政策と地球温暖化への姿勢を厳しく批判しているゴア前副大統領のような人物が時期大統領になる可能性だってないわけではありません。 そうなった暁には、日本の安倍政権は世界の先進諸国の物笑いの種になることでしょう。
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