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タイトルルシタニア号事件
記事No59
投稿日: 2007/02/24(Sat) 07:23
投稿者バグってハニー
ちょっと短いのでこっちに投稿しますが、無料配信していただいてもかまいません。

表題に関して以前PBS(米国でNHK教育に相当)でやっていたドキュメンタリーを思い出しました。
http://www.pbs.org/lostliners/lusitania.html
ルシタニア号があまりにもあっけなく沈没したので、ドイツはこの客船が秘密裏に弾薬を運んでいて、それに引火したからだろうと、自らの魚雷攻撃を正当化しました。一方で、乗船していた人々が魚雷に引き続く二度目の爆発を証言したのも事実で、この番組はこの二度目の爆発が何の原因で生じたのか、潜水調査を行ったというものです。結局、番組の中では真相は解明されなかったのですが、一方でルシタニア号は確かに弾薬を運んでいたことも知りました。積荷目録にはレミントン・ライフル実包4200箱、榴散弾1250箱、信管18箱が記されています。

この話をさらに膨らませて、ルシタニア号は引火性のある、さらに危険な無煙火薬などを運んでいたのだろうとしたのがコリン・シンプソン(Colin Simpson)です。WikipediaのContraband(禁輸品)の項は、
http://en.wikipedia.org/w/index.php?title=RMS_Lusitania&oldid=104009806#Contraband
このシンプソンの主張に沿って記述されています。曰く、何万トンもの弾薬が「チーズ」などと偽って運ばれていたと。

なにやら、チーズ臭ならぬ陰謀論の匂いが漂ってくるような話ですが、当然、シンプソンの説はすぐさまベイリーとライアン(Bailey and Ryan)によって反駁されました。
http://www.gwpda.org/naval/lusika03.htm
ではベイリーとライアンの立場から、両者の主張を分かりやすく対比させて紹介しています。ちなみに、Wikipediaの問題の項も、良心的な人々によって現在までにすでに書き換えられています。

しかし、ベイリーとライアンの主張から当時の戦時国際法は今とはだいぶ違うことも知りました。いかなる規模であろうと弾薬類を運搬しているのであれば、正当な攻撃対象とされても仕方がなかろう、と初めは私も思ったのですが、交戦国と中立国間の交易は国際法下でも国内法下でも当時は合法であり普通に行われていたのです。これが禁じられたのは1935年に米国で中立法(Neutrality Act)が制定されてからで、実際、ルシタニア号を所有していたカナードなどの英国の海運会社は米国から弾薬を運搬していたのです。

米国は英仏への弾薬の供給を不用意にも許していたために、つまり、米国は弾薬の供給を通して生来的な同盟国である英仏の戦争に加担していたために、ドイツからの敵視とルシタニア号事件を招いたと言えます。ツィメルマン電報があったところでメキシコは米国にとって軍事的脅威とはなりえないわけですから、対ドイツ防衛というよりも、生来的な同盟国である英仏を支援するためになし崩し的に米国は第一次世界大戦に参戦することになったのです。ちなみに、ウィキペディアのWWIの項では、オーストリア=ハンガリーに対する宣戦が遅れたのは「ウィルソンは、オーストリア=ハンガリーとは別途平和を保ちたいと考えた」からとされています。

タイトルRe: ルシタニア号事件
記事No60
投稿日: 2007/02/24(Sat) 21:49
投稿者太田述正

> 米国は英仏への弾薬の供給を不用意にも許していたために、つまり、米国は弾薬の供給を通して生来的な同盟国である英仏の戦争に加担していたために、ドイツからの敵視とルシタニア号事件を招いたと言えます。・・・対ドイツ防衛というよりも、生来的な同盟国である英仏を支援するためになし崩し的に米国は第一次世界大戦に参戦することになったのです。

 この肝心の部分に典拠がついていませんねえ。

 それはともかく、本格的なコラムの到着をお待ちしています。