太田 述正 Web Forum
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タイトル Re: 昨日の続き
投稿日: 2007/06/16(Sat) 17:27
投稿者JSF

> > JSF氏:航空自衛隊とイギリス空軍が戦闘を行った場合、航空自衛隊の圧勝に終わります。
>
> もう一つの可能性は自衛隊の不戦敗です。普通、無意識のうちに英軍が日本に攻め込むというシナリオを想定しますが、当然、日本が英国に攻め込むというシナリオもあります。JSF氏も認めるとおり、自衛隊には外征力がないので、そもそも戦闘が起こらない→自衛隊の不戦敗になります。

そもそも戦力比較を行っているのであって、実際に対戦するシミュレーションを行うのが目的ではありません。お互い遠すぎますし。

> 日本が打って出る必要性に駆られることは今のところ想像しにくいですが、ありえないことではありません。今、在韓米軍はどんどん縮小していますが、米軍が完全に撤退した後に、南北朝鮮で戦端が切り開かれるといった可能性があると思います。その際、米国が何らかの政治的判断により参戦しないと判断した場合、日本は窮地に追い込まれます。たとえ、日本本土が直接被害を受けることがなくても、韓国には何万人とも言う日本人駐在員・観光客がおり、外征力を欠いた今の自衛隊の戦力ではこれを見殺しにするしかないからです。

そういった条件の場合、韓国軍の協力が得られます。釜山に橋頭堡を確保して艦船(フェリーを動員しても良い)を使用するか、南部の空港に民間機を含む輸送機を下ろして退去します。そもそも目と鼻の先です。この場合、侵攻用の外征力は必要ありません。


> 太田氏は著書の中で、自衛隊の戦力は「蜃気楼のようなもので」「実態は殆ど何もな」く「あまりにも弱体」などと刺激的な言葉を繰り返していますが、これは日本が他国の侵略に簡単に屈服すると言う意味ではありません。太田氏の見解はそれとは正反対でしょう。ソ連の脅威が喧伝されていたときであっても、自衛隊・米軍の方があまりにも優勢であったので、手加減しながら机上演習を続けていたことを暴露したのは太田氏自身です。

では「蜃気楼のようなもので」「実態は殆ど何もなく」「あまりにも弱体」などというセリフは使ってはなりません。

> 兵員装甲車の数が少ない、「肝心の空母や揚陸強襲艦といった攻撃用の艦艇を全く持っていない」、といった文言から自衛隊の防御力ではなく、攻撃力・外征能力が著しく劣っていることを太田氏が問題視していることが推察されます。攻撃ヘリや戦闘機の数を俎上に載せたのもこれらを攻撃力の尺度として用いたかったからでしょう。

日本国は専守防衛国家であり、侵攻用戦力は特に必要が無い。また攻撃ヘリの戦力は英軍以上であるし、戦闘機戦力は空中戦闘で英軍を圧倒できます。

> 例えば、英海軍にはヘリ揚陸艦オーシャンというのがあります。
> http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Ocean_%28L12%29
> 英海軍はこれに最大18機のヘリを搭載して、実際にイラク戦争で使用しています。これは、太田氏が指摘した通り、自衛隊が持っていない兵器の一つです。

自衛隊はそもそも侵攻型軍隊ではない。


> ガゼルはそれ自身は対戦車攻撃力を有していなくても、英陸軍がガゼルを対戦車攻撃の要としてカウントしていることに変わりはありません。
> http://www.army.mod.uk/equipment/ac/gazelle.htm
> というのは、ガゼルはリンクスなどの攻撃ヘリと対にして対戦車戦に投入されるからです。
> http://www.army.mod.uk/aac/units/3_regiment_aac/662_squadron/index.htm
> (中ほどに、リンクス6機、ガゼル6機で部隊が編成されたことが書かれています。)
> 英陸軍のガゼルが対戦車ヘリではなかったとしても、太田氏が同機を「対戦車機動攻撃力」にカウントしたことは的外れではありません。形には表れずとも、日本にはなくて英国にあるものとして、このような部隊運用のノウハウも挙げられます。

ハニー氏、その主張はあまりにもおかしい。戦闘ヘリが観測ヘリとタッグを組んで運用されるのは常識でしょう? 貴方もそれくらいのことは理解している筈だ。そのような理屈でガゼルを「対戦車機動攻撃力」にカウントするのであれば、陸自のOH-6やOH-1もカウントしなければおかしい。それが道理でしょう?

> そして、日本に決定的に欠けているのは実績です。英国はこのような対戦車ヘリ部隊を湾岸戦争やイラク戦争に投入して実際に多大な戦果を上げています。すなわち、これらの兵器、部隊はすでに実戦でテスト済みです。

コブラは米軍が使用し多大な実績を上げています。自衛隊に配備されているものと同じものです。

> 対戦車攻撃力は攻撃ヘリの数比較だけでは決まりません。対戦車部隊を敵地まで輸送し展開する能力、戦闘を継続するための補給、部隊を運用するノウハウ...。これは単なる後付の解釈変更ですが、太田氏がいう「対戦車機動攻撃力」の機動とは対戦車へリ部隊を機動的に運用する能力と定義すれば、太田氏がこのような議論を尽くしておらず、それが同書の目的ではないとしても、日本の「対戦車機動攻撃力」は英国よりも劣っているという太田氏の指摘は、とりもなおさず真実を突いていることに変わりはありません。

いいえ、明らかに間違いです。太田氏は「武器の値段」で「対戦車機動攻撃力」の優劣を語っているのですら。しかも値段の安いガゼルやリンクスを、高価なコブラと同じ値段で計算している。そして機体数を掛けたその値段が戦力比だという。

どう見ても水増しに水増しを重ねる行為です。

> 自衛隊の装備は防御型で攻撃力・外征力を著しく欠いていたり、自衛隊が実戦に投入されたことがないのは自衛隊の責任ではありません。それは、憲法の制約の下、政治家が行った数々の決断の帰結にしか過ぎません。太田氏の論考はそのような政治問題には触れずに、自衛隊の装備に着目してボトムアップ式に日本の安全保障における潜在的な問題点、すなわち、防御は固いが打って出ることができないという問題点を軍事にはほとんど関心がない一般大衆に対して喚起しようとした点がユニークであったと私は思います。

前提となる数値自体が間違っていますので、説得力がありません。


> 太田氏の引用が厳密さを欠いていたことは確かですが、自衛隊の装備を通して日本の安全保障の問題点を訴えようとした太田氏の著書の意義は全体として損なわれたわけではないと思います。同書が9/11の前に書かれたことに思いをいたせば、自衛隊の装備の問題点を指摘した同書は慧眼にあふれていたともいえます。おそらく、太田氏にも全く予期できなかったのは6年も経って挑発的な文言に反応したのが軍事に関心のない一般大衆という想定読者ではなく軍事愛好家であったことではないでしょうか。

間違った数字を主張し、何も知らない一般大衆を騙すような行為は不誠実です。


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